歌った少女マイジュラン
きゅうくつな教室
仮説教室と子どもたち
五歳の少女が歌った
髙岡 美智子
Manmanm pa voye m’lekol ママはわたしを学校に行かせてくれない
M’a ap leve defi a でもわたし、ぜったいに行く
おずおずと立ち上がり
探るように私を見た
歌っていいの わたしの歌を
ほんとのこと 一番いいたいことを
もちろんよ 歌って 私も目でこたえた
Manmanm pa voye m’lekol ママはわたしを学校に行かせてくれない
M’a ap leve defi a でもわたし、ぜったいに行く
幼い子どものよく通る声
うたうことに集中したその目
ひたむきに繰り返す 同じメロディー 同じことば
細い首をまっすぐのばし 小さな胸のありったけを
少女は歌っている
Manmanm pa voye m’lekol ママはわたしを学校に行かせてくれない
M’a ap leve defi a でもわたし、ぜったいに行く
さっき歌い終えたほかの子たちは言った
その子は歌なんか歌えない だって学校へ行っていないもの
ほら 聞いて 私の言ったとおりでしょう
子どもはみんな歌えるの だれでも心に歌を持っている
今しんとして聞く子どもたち 流れる涙を止められない私
少女の背の高さに身をかがめ 小さな手を取って
私はたずねた この歌 だれに教わったの
誰にも!わたしが作ったの
はじめからわかっていた答えに また涙があふれた
Manmanm pa voye m’lekol ママはわたしを学校に行かせてくれない
M’a ap leve defi a でもわたし、ぜったいに行く
耳に残るその声 心ゆすぶる一途な思い
もしかすると それは学校を知らないママが 文字を読めないパパが
忘れるほど遠いむかし 心に繰り返した叫び
そして 学校へ行きたいけれど行かれない子どもたちの声
ハイチ 貧しいこの国の 私は一人の教師
この歌に かつて出会ったおおぜいの子どもたちの声が重なり合う
おなかをすかせた子どもにパンを
のどがかわいた子どもに水を あたえるのは大人のつとめ
子どもたちに 教育をあたえるのは教師のつとめ
Manmanm pa voye m’lekol ママはわたしを学校に行かせてくれない
M’a ap leve defi a でもわたし、ぜったいに行く
この国の一人の教師として 子どもたちに言おう
さあみんな 学校においで
本を読めるようになろう
フランス語も英語も話せるようになろう
未来を開く鍵 世界にはばたくつばさを持とう
学校はみんなのもの
ああ ほんとうにそう言えるように
神様 私に力と勇気をあたえてください
わたしも がっこうに いく
エクトル・シエラ
はやくおきて みずをはこんでくる
きょうだいに ごはんをつくる
ともだち きょうも がっこうへいく
おおさわぎして はしっていく
しろいシャツの おとこのこ
ブルーのスカートのおんなのこ
かならずいく かならずいく
わたしも いつか がっこうにいく
A,B,C,一、二、三
ならうことは もりだくさん
こうかをうたい じゅぎょうにいそぐ
かしてあげるよ ちびけしごむ
せんせいの はなしを よく きく
チャイムが なったら かえっていく
いえにもどって いいこに する
きょうだいを せおって しゅくだいを する
かならずいく かならずいく
わたしも いつか がっこうにいく
A,B,C,一、二、三
ならうことは もりだくさん
おかあさん がっこうに いかせてくれない
ずうっと いえで しごとをさせたい
でも かならずいく かならずいく
わたしも いつか がっこうにいく
うみや やまや かざん
ならうことは もりだくさん
ならうことは もりだくさん・・・
ならうことは もりだくさん・・・
ハイチセスラ校のモーリャンク校ができた経緯を、マリクレール校長が長いメールで報告してきました。2010年秋のことです。感動的なその物語から、当時セスラ校へお金やモノではない励ましを届けたいと、「国境なきアーティストinハイチ」の準備をしていたチームのなかで2つの詩が生まれました。
その一つ、高岡美智子による 「五歳の少女が歌った」は、2010年9月28日 横浜イギリス館での「国境なきアーティストinハイチ」支援チャリティーコンサートにて、高岡美智子、山田カリンで朗読され、2011年には山口県の兄妹バンド、マウンテンマウスが曲をつけて歌ってくれています。 エクトル・シエラの「わたしもがっこうへいく」は、2010年、ハイチ支援のチャリテーコンサート「ミジカド」にて、出演ミュージシャン雅紀与によって曲がつけられ演奏されました。 エクトル、高岡は「国境なきアーテイストinハイチ」のチームでハイチを訪問した際、この歌の少女マイジュランに会うことができました。
2つの詩 と モーリャンクのセスラ校
「わたしも がっこうに いく」 エクトル・シエラ
「五歳の少女が歌った」 髙岡美智子
2010年9月ハイチのアルチボニット県モーリャンクにセスラ校が誕生しました。
学校開設をマリクレール校長に決意させたのは、一人の少女の、強い願いと決意でした。
2017年11月現在セスラ校は
*幼稚園3クラス、小学校6クラス、生徒数326人 教職員16名 *
子どもたちの学ぶ場所にふさわしい学校建設が課題です!
ハイチの人々と力を合わせ、取り組みます。 ご支援をお願いします。